TaktOp(タクトオーパス)に登場するキャラクター「」について。
基本情報
楽曲 |
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オペレッタ「」 |
声優 |
朝井 彩加(あさい あやか) |
フレーバーテキスト |
楽観的で道化的。おしゃべりでウワサ好き。常に人を食ったような態度をとり、他人をからかっては反応を楽しんでいる。機械いじりが好きで、日がな一日それに没頭していることも。 |
元ネタ
とは
はヨハン・シュトラウス2世が1874年に作曲したコメディ調のオペラである。コメディ調であることからタクトオーパスに登場する「」も楽観的で道化的な性格をしている。
オペラで成功したいという執念
1865年、ウィーンで大成功を収めたオペラ「美しきエレーヌ」を観たシュトラウス2世は自分もオペラを作りたいと思っていた。だが当時のウィーンではフランツ・フォン・スッペの作品が大成功を収めており、自分がオペラの世界に入る余地はないとあきらめていた。4年後の1869年、合唱用ワルツの作品で大成功を収めていたシュトラウスに対して、劇場支配人からオペラを作るよう勧められる。さっそくオペラをつくったが、主役をだれか演じるかで女性歌手たちがもめてしまい、上演はとん挫。シュトラウス2世はあきらめず次の作品「インディゴと40人の盗賊」を作った。ある程度成功したものの、台本の不備が目立ち、やがて上演打ち切りになってしまう。その後も1873年に「ローマの謝肉祭」をつくったが失敗。シュトラウス2世のオペラ作品はどれもあまり成功しないまま終わってしまった。しかし、シュトラウス2世はあきらめず1874年に「」を書きあげる。「」はベルリンでも上演され見事な成功を収めた。
オペラの内容
上演時間は約2時間半。3幕で構成されている。
第1幕
銀行経営者であるアイゼンシュタイン男爵は役人を殴った罪で1週間程度の禁固刑を言い渡されていた。男爵の友人であるファルケ博士は「とりあえず舞踏会を楽しんでから刑務所に行けばいい」と言って男爵を舞踏会に連れていく。男爵が出発した後、男爵の妻は「夫だけ楽しんでいるのは気に食わない」と感じ、家に元カレを連れ込んで逢引きする。しかし運悪くそこに刑務所から迎えが来てしまい、まさか浮気相手だなんて言えない妻は元カレを夫として仕立て上げ、元カレは身代わりとして刑務所に連行された。
第2幕
男爵はオルロスキー邸で華やかな舞踏会を楽しんでいた。舞踏会にはなぜか男爵家の小間使いがおり、舞踏会に行くために男爵の妻のドレスを無断で拝借していた。男爵が「家の小間使いにそっくりだな」と言うと、彼女は「こんな綺麗なドレスを着た美しい女が小間使いのはずがないでしょう」とからかい、男爵もそれにうなづいてしまう。
男爵の妻は夫が刑務所に行かずに遊んでいることに腹を立て、男爵を懲らしめるために遅れて舞踏会に参加。仮面を付けてハンガリーの伯爵夫人に変装し、男爵の元に近づく。妻だと知らない男爵はニセ伯爵夫人を口説き始めた。妻は男爵がよそ見している間に、男爵が自慢していた懐中時計を盗んだ。
時計を盗まれたことに気付かないまま、男爵は偽名で舞踏会に参加していた刑務所長と仲良くなる。午前6時の鐘が鳴り、男爵は刑務所長に別れを告げて刑務所に行った。まさか彼も刑務所に通勤するとは全く思わなかった。
第3幕
牢屋では酔っぱらった看守と妻の元カレがコントのようなやりとりをしていた。男爵は刑務所に到着すると、刑務所長に再会して驚くが、「既に男爵が牢屋に入っているんだが」と刑務所長に言われて困惑する。牢屋には知らない男(=妻の元カレ)が入っていた。都合よく現れた弁護士の服を強引に奪い取り、弁護士の変装をして看守から話を聞く男爵。刑務所に入っているのが妻の元カレで、妻が逢引きしていたことを知ると、男爵は妻と元カレを懲らしめてやろうとして変装を解いた。だが、刑務所に遅れてやってきた妻も舞踏会で盗んだ時計を見せて、男爵の浮気を追求。最後はお互いに謝罪し大団円となって終了。
イラストレーションノベル
「痛てててて……」 ガラガラと、部屋の中に積みあがるガラクタや廃部品の山をかき分けて、やっとのことで顔を出すことに成功。私の部屋は、主に地上のゴミ廃棄場から拾い集めたガラクタたちが、天井まで届きそうな山を二つ作っていて、それが大半の容積を占めていまして。その一つが崩れたせいで、もう一つの山も連鎖して雪崩を起こし、油臭いジャンク品の海の出来上がり、というワケで。 「いやはや、少女の怒りは怖ろしいですねえ……」 それもこれも、アヴリルを怒らせてしまったせいです。アヴリルとは――勝ち気と高慢が目印の、見習いコンダクターの少女。今回のオーストリア遠征でペアを組むように言われている相手です。きっかけは、早く正式なコンダクターになりたいアヴリルが、この私に“契約”を迫ってきたこと。“契約”とは、ムジカートにとって、命とも言うべき楽譜をコンダクターに預ける行為です。ムジカートとコンダクターの連携が深まり、ムジカートの戦闘能力も大幅に向上します。つまるところ、契約したムジカートがいるということは、立派なコンダクターの証拠とも言えるワケです。ところが通常、“契約”とはムジカートからコンダクターに請うもの。さらに、両者の間に深い絆が存在することが前提というシロモノでして。それを、あのプライドの高いアヴリルの方から申し出てきて、しかもあまりに必死な顔をするものですから、それがおかしくて、ついからかってしまったワケです。 ――この、バカ『』! いっつも人をからかって! もう勝手にすれば!? 結果、彼女は私に心ない罵声を浴びせ、前世は茹でタコですかというくらいに顔を真っ赤にしつつ、足を踏み鳴らして部屋を出て行ってしまいました。そして、怒り任せに閉められたドアが、堆く積みあがったガラクタの山を崩し――というのが、これまでの経緯。なんですかねえ、これ。カップルの痴話喧嘩ですか。 「ちょっとムジカートにからかわれたぐらいでへそを曲げてるようじゃ、立派なコンダクターにはなれませんよ~?」 私はそう独りごちながら、部屋を埋め尽くすガラクタを隅へ押しやり、歩くだけのスペースを確保します。 「コンダクターから“逆プロポーズ”だなんて、うら若き淑女のすることとは思えませんし?」 おっとと。こういうことを言うから怒らせてしまうんでした。ですが、あの顔……ぷくくくくく。いつもは勝ち気で余裕ぶっているくせに、ああも平静を失った様子で、桃のように赤らんだ頬を健気に隠しながら迫ってくるのを見ると……さすがに……ぷくくく。思い出しても、笑いがこらえきれませんねえ。 「はぁ……彼女のおかげで免疫細胞が活性化しましたよ」 私は、ひとしきり笑った後、一人の見習いコンダクターの少女によりもたらされた愉悦と健康に感謝します。続けて、散乱した部屋の中をぐるりと眺め、これは今日中には片付かないと察すると、その場にどかっと胡坐をかいて座り込みます。「まあ、片付けなんていつでもいいでしょう」 もともと私は、散らかっていることなど意に介しません。どこになにがあるのかも、完全に把握しています。片付けなんていうのは、つまるところ他者へのサービス。自分以外の誰かのために、わかりやすく整理し、動線を確保し、気持ちの良い配私には必要ない。置をするわけです。私にとって大事なのは、それが愉快かどうかです。とてもシンプルなポリシーですよ。楽しめるなら、片付けだって進んでするんですがねえ。 思えば、ムジカートとして第二の生を受けてから、どのくらいたつでしょうか。まあ、10年じゃきかないはずですねえ。正直、退屈なのです。同じ事の繰り返しばかりで。技術の進歩や、機械いじりにはもちろん興味はあります。けれど、それも以前ほどワクワクさせてはくれません。無理もないこと。なぜなら、今の人間社会には技術を発展させるだけの余力が残っていないのですから。そんな中で、愉快なのは人をからかうことぐらい。人間ってのは不思議なものでして、一人として同じものがない。一定の傾向はあれど、怒る様子も様々です。退屈を紛らわすには人間をオモチャにするのが一番。それが、長いような短いような、やっぱり長いムジカート人生の中で私が学んだことです。 ただ悲しいことに、付き合いの長い人間ほど、私にあまり近寄ってこないもの。まあ、からかわれるとわかって、わざわざ近づいてくる変わり者もいませんからねえ。ところが、あのかわいいアヴリルは違います。彼女は、まだ私のコトを理解しかねているのか、あちらからかかわろうとするのです。からかわれてもからかわれても、へこたれない。思えば、「部屋くらい綺麗にしなさいよ」としきりに私に言ったのも彼女でした。彼女の言う通りにしていれば、ガラクタの下敷きにならずに済んだのかもしれません。 「やはり、彼女ほど貴重な人材を失うわけにはいきませんねえ」 どうせ強情なアヴリルのこと。文句を言い足りず、まだ部屋の前にでもいるんでしょう?ふふふ、そういうところが成長しないんですよねえ。 「待って下さいよ~。アヴリルコンダクタ~」 私はわざとらしくか弱い声を出し、身体をしならせながら部屋を出ます――が。 「あらら?」 すでに彼女の姿はそこにあらず。廊下を左右、先の方まで見渡しても、影も形もありません。 「はて。これは、思いがけず成長してしまいましたか?」 ついに私に愛想を尽かせて、別のムジカートのところにでも行ってしまったのでしょうか。いつまでも生き続けるムジカートと違って、人間というのはすぐに成長してしまうもの。そして、すぐに年老いて、すぐに死んでしまう。みんな、そうでした。素敵なオモチャは、いつだって、あっという間に壊れてしまうのです。 ……。私は、散乱した部屋の中を振り返ります。転がる無数のジャンク品の中、とあるブリキ製のオモチャが目に入りました。高さ20㎝程度の、ピエロの形をした、ゼンマイで歩くオモチャ。それは覚えている限り、この中で一番古いガラクタでした。派手なサーカス衣装。ティアドロップの化粧。そのピエロが床に転がったまま、悲しげな顔でこちらを見つめています。 「そんな顔でこっちを見ないでくれませんかねえ?」 ピエロとは、いつもおどけて人を笑わせる道化役者。そんな彼だからこそ、見せる涙が印象的なわけで。つまるところ――それはアヴリルと同じ。 ――ね、ねえ、『』! この私と“契約”をしなさいよ! あの気の強いアヴリルが、恥をしのんで私に“契約”を迫ったわけです。頬を赤らめ。勇気を出して。鋼のプライドをねじ曲げてまで。あの言葉を口にするまでに、何日もの葛藤があったことでしょう。言うべきか。言うまいか。ベッドの中で、あの長くて綺麗な髪をかき回して苦悩する姿が目に浮かびます。すると。 カツン まっすぐな廊下を曲がった先。――。そこで小さな音がして、人影が動いたことに気づきました。確か今日のアヴリルは、ヒールの固い靴を履いていました。床を踏むと、ちょうどあんな音のする靴を。 「……ふぅ。私も、少しは歩み寄らねばならないですかねえ」 私は部屋の中へ戻り、機械油で汚れた作業机の引き出しを開け、小さな花束のようなものを取り出しました。ヤドリギのスワッグ。スワッグとは髪飾りのこと。クリスマスのスワッグでよく使われるのがヤドリギで、ヤドリギには魔力が宿り、お守りとして使われることが多くあります。これは前に、理由をつけて『木星』から譲り受けたもの。そして、誰かに気分であげようと思い、机の引き出しにしまったままだったもの。 次に、私はブリキのピエロを拾い起こします。そして、その手にヤドリギのスワッグを持たせました。このピエロは、拾った時は壊れて動きませんでしたが、根気よく修理と改造をすると、再び歩き出すようになりました。ジリジリ。ジリジリ。ゼンマイをいっぱいに巻いて、廊下に立たせます。するとピエロは、先ほど人影が動いた曲がり角に向かって、一歩一歩、不器用に歩き出しました。ガシャ、ガシャ。ガシャ、ガシャ、と。また曲がり角で、人影がわずかに動いたのがわかりました。 別に、なんてことありません。顔を真っ赤にして出ていったあの子への仲直りの印だなんて、まったく全然、これっぽっちも思ってません。苛酷な戦場へ行く前に、少しでも笑顔になってもらおうだなんて、全然思ってませんから。 ただ、あのピエロと同じように、素敵なモノは失いたくないという、私のワガママですよ。 ガシャ、ガシャ。ガシャ、ガシャ。ガシャ。 ピエロが曲がり角にたどり着くと、陰から白くて華奢な手がためらいがちに伸びてきて、ヤドリギのスワッグをつまみ上げるのが見えました。うまくいったようで、ホッとします。これで彼女も機嫌を直してくれるでしょう。 お楽しみはこれからです。そのピエロ、あと三秒で首が取れて、アナタに向かって花火が噴き出しますから。(原案:高羽 彩 小説:石原 宙 イラスト:エシュアル)
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