
TaktOp(タクトオーパス)に登場するキャラクター「」について。
基本情報
楽曲 |
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バレエ曲「」 |
声優 |
芹澤 優(せりざわ ゆう) |
フレーバーテキスト |
少年のような風貌の少女。感情に支配されるのを嫌う。マイペースで、他人にあまり興味を持っていない。ただ集中力は異常に高く、一度集中し始めると、周りの声がまったく聞こえなくなることも。 |
元ネタ
とは
はバレエ演者のイダ・ルビンシュタインの依頼により、フランス人作曲家モーリス・ラヴェルが作ったバレエ曲。作曲は1928年の7月から10月にかけてアメリカでの演奏旅行中に行われた。旅行から帰ってきたラヴェルは友人にこの曲をピアノで弾いて見せるが、その時はファタンゴという題名だった。のちにへ改名。初演は同年11月にパリ・オペラ座で行われた。その後、各地の一流オーケストラによって取り上げられる人気曲となった。は同一のリズムが保たれている中、2種類の旋律が繰り返されるシンプルな曲であり、タクトオーパスに登場するの性格にも反映されている。
あらすじ
スペイン・セビリアのとある酒場で一人の踊り子が舞台で足慣らしをしていた。やがて興が乗ってきたのか踊りだし始め、それを見ていた客たちも最後は一緒に踊りだした。
あなたもを聴いたことがあるはず
はシンプルで使いやすい曲であり、様々な場面で使われている。全て上げるときりがないので有名なものを挙げるが、誰しも一度は聞いたことがあるはずである。
・黒澤昭監督の映画「羅生門」
・TVドラマ「警部補 古畑任三郎」第3シーズン
・TVドラマ「相棒~SeasonV」
・NHK連続テレビ小説「あすか」
・アニメ「クレヨンしんちゃん」幼稚園通園シーン
・アニメ「デジモンアドベンチャー」劇中曲
・アニメ「エヴァンゲリヲン新劇場版:序」
・アニメ「のだめカンタービレ」劇中曲
・CM「ホンダ・プレリュード」
・CM「スズキ・エスクード」
・CM「アートネイチャー」
・フィギュアスケーター安藤美姫のショートプログラム
・フィギュアスケーター宇野昌磨のフリープログラム
イラストレーションノベル
コツ、コツ、コツ——。 一定のリズムで、一つの足音が響いている。なにものにも侵されない心地よい足音だ。 ここは、ベルリン・シンフォニカ。音楽堂の中にあるコンダクター居住区の廊下。足音の主は僕——『』だ。フランスの作曲家モーリス・ラヴェルの手によるバレエ曲『』の譜を宿したムジカート。 すると、その調律された足音をかき消すように、廊下のあちらから騒がしい声がやってきた。急いだ様子のコンダクターたちだった。それぞれが大荷物を抱えている。 「おっと、すまない『』! 急いでいてね!」「キミは準備万端かい? 『』! あちらではよろしく!」僕は一度立ち止まり、視線だけを交わすと、僕の左右両側を走り抜けていく彼らの背中を見送った。そう。今日は、数名のコンダクターが、D2の活動が活発化したオーストリアの戦線へと発つ日だ。ただでさえ出発前は慌ただしくなるのに、天候の関係で急遽出発時間が早まったものだから、音楽堂はてんやわんやの様相だった。コツ、コツ、コツ——。それを尻目に、僕はまた一定のリズムを刻んで歩き始めた。オーストリアへは、この僕も帯同するよう言われていた。準備はすでに済んでいた。戦いへ行くのに、それほど必要なものもない。最悪、この体ひとつあればよかった。 コツ、コツ、コツ——。 少し歩くと、扉が開いたままの部屋があった。中を覗けば、小柄な少年が一人。彼は、本や日用品、旅行用バッグなどで散らかった床に座り込み、「あわわ……」だとか「うう……」だとか、たびたび苦悶の声を上げながら、段ボールにアレを詰めてはコレを出し、封をしたと思えばまた開けて——と、右往左往の限りを尽くしていた。それは、テキパキと準備を進める歴戦のコンダクターたちとは一線を画す狼狽具合。一端のコンダクターともなれば、多少の予定変更などでうろたえない。僕は、その青ざめた少年の顔を見て納得した。なるほど、彼は見習いコンダクターの—— 「ニコラ・カヴァリエ」「は、は、はいっ!?」 最近やっと耳に馴染んできた名前をつい口に出すと、彼は背骨にバネでも入っているみたいに跳ね上がり、背筋をピンと伸ばしてこちらを向いた。 「す、す、すぐに準備しますからっ! お待ちくだっ……っ! ……って……『』か……」 一度カエルのように平身低頭し、それから顔を上げて僕を確認すると、はぁ……と大きく息をつき、全身で安堵の意を示す少年。ニコラ・カヴァリエ。17歳。細身。童顔。小動物のように怯えた目。フランス系のファミリーネームだから、おそらくそちら系出身か。詳しくは知らない。 「先輩のコンダクターかと思ったよ……はは……」 ニコラは、声をかけた主が僕だったことに安心したのか、肩の力を抜いて、少しだらしない顔をした。性格、気弱。意志も薄弱。優しいと言えば聞こえはいいけど、覇気に欠ける。多少の予定変更でこれほど恐慌をきたすとは、先が思いやられる。けれど、彼の気持ちも少しはわかった。今回の遠征は、いわば見せ場だ。オーストリアで戦績が認められれば、見習いから正式なコンダクターに昇進できる可能性もある。今も滾々と流れ出るあの冷や汗の理由は、そのプレッシャーに違いない。僕は立ち止まって思案する。 ——なにか声をかけてやるべきか。 このままじゃろくに準備も進まない。ただでさえ機敏なタイプではないのに、戦いに向けた重圧がさらに彼の手を鈍らせている。僕は口を開きかけて、また噤んだ。 ——いや、なにも言わない方がいいだろう。 だって、自分が声をかけることで、ニコラのペースを崩してしまうかもしれない。誰にでも自分のペースがある。生きるリズムがある。なによりも僕自身が、他人にリズムを乱されることを嫌っていた。心臓の鼓動も、呼吸も、足音だって、常に一定であってほしい。このリズムが乱されてしまえば、最適なパフォーマンスは決して発揮できない。だから僕はいつも、自分の内側に耳を傾けた。勝つために。いつだって静かに、いつだって一人で、生死を分ける舞台に立ち続けてきた。踊り子は、孤独の熱に浮かされて、初めて高く飛べるのだ。 そんなことを考えていると、とたんに周囲の喧噪が煩わしくなって、ポケットにしまっていたウォークマンを取り出した。お気に入りの、古い音楽再生機だ。そのイヤホンを耳に挿す前に、ニコラが僕に声をかけてきた。 「ご、ごめん! レーションと保存用の乾パン、どっちを持って行くべきだと思う!?」「レーションと保存用の乾パン?」「そう! バッグも段ボールももう一杯で、どちらかしか入らなくて……!」そんなこと、半泣きになってまで聞くことだろうか。そう思いながら、僕は淡々と答える。「どっちも現地で支給されるから持って行かなくてもいいと思う」「そうなの!? 僕よく分からなくて……。アヴリルに聞いても馬鹿にされるだけだし……」アヴリルというのは、ニコラと同じコンダクター見習いだ。性格はニコラとは正反対で、気が強く、自分に自信があるタイプ。二人はまるで姉弟のような関係で、事あるごとにニコラはアヴリルの尻に敷かれ、やり込められていた。僕は尋ねた。「だからって、なぜ僕に?」「え?」尋ねるならほかにもっと適任がいるだろう。ここはコンダクター居住区。経験あるコンダクターの先輩がたくさんいる。ニコラは答えた。「だって、優しいから」思わず、僕はぽかんとしてしまった。僕が……優しい?いつだってマイペースで、他人に干渉せず、仲間たちから冷たいと言われたことはあっても、優しいだなんて言われたことはない僕が?黙りこくった僕を見て、ニコラがあわてて言った。「ご、ごめん! 僕、なんか変なこと言った!? あ、えと、それに、に聞いたのは、オーストリアじゃ組んで戦うようにって言われてたから、そのこともあって……!」両手を振って、弁解するみたいに。確かに彼の言う通り、遠征先ではしばらくニコラと行動を共にするように言われていた。僕が見習いコンダクターのお世話係に向いているとは、とても思えないけど……。——いけない。優しいだなんて予想外のことを言われて、ついペースを乱されてしまった。この、まだ半人前のコンダクターに。彼は未熟なのだ。未熟だから、自分の欲している優しさを、パートナーである僕に投影してしまったのだ。ただ、それだけのこと。僕は僕。彼の主観は関係ない。これまでも、これからも変わらない。「なにか手伝おうか?」そう僕が言ったのは、優しい人を求める、彼の期待に応えるためじゃない。自分のペースを取り戻して、ただ余裕ができたためだろう。もしくは事務的な要請。このまま準備が遅れて、彼が遠征に間に合わないことにでもなったら、作戦全体に影響が出る。そちらの方が、僕にとっては都合が悪い。だけど、ニコラは違う受け取り方をしたらしい。「……! やっぱりは優しいね……!」また、じわりと涙目になっていた。だらしなく鼻をすすり、感極まった顔をする。それを見て、僕は自分の感情が再びざわつくのを感じた。ムジカートとコンダクター。コンダクターとの関係を深めることで、戦闘パフォーマンスも上がると主張するムジカートは多い。けれど、僕はそれを信じていない。だって、関係が深まるということは、自分のペースを乱されるということだ。心の領域侵犯だ。他人と心を通わせるなんて、せっかく美しく凪いだ湖面に絶えず石を投げ込まれるようなもの。そんな悲惨なことはない。僕にとってデメリットでしかないわけだ。——それに。——戦場でパートナーを失う苦しみは、もう味わいたくない。「やっぱりやめた」「え!? どうして!?」僕が申し出を取り下げると、ニコラは目を丸くして、悲しげに細い眉を寄せた。僕は続けた。「君、今度の遠征で戦果を上げたいんだろう? 荷造りもまともに出来ないようじゃダメだと思うから」「あ……。そ、そう……だよね……」がっくりと肩を落として、下を向くニコラ。そして、また荷造りの続きを始めた。しょぼしょぼと、ため息まじりに。僕はそれをただ眺めている。僕は常々、共に戦う者には、僕と同じく孤独であってほしいと願っていた。なぜなら、孤独に耐えられる者にしか奏でられない音色があり、僕はそんな音を愛しているからだ。それはちょうど、『』という曲を構成する、二つの旋律のように。『』という曲は、一定のリズムに乗せて、最初から最後まで、ひたすら二つの旋律が繰り返される。二つの旋律は、互いにおもねらない。寄りかかりもしない。あくまで交互に、重ならず、自らを力強く主張し続ける。けれど、最後には分かち難く結びつき、周囲を巻き込む熱狂を生む。いつか、自分と似た孤独を背負った人間に出会えたら。その時には共に奏でよう。気高く熱い孤高のシンフォニーを。今は、まだその時じゃない。コツ、コツ、コツ——。ニコラの部屋に背を向けて、僕はまた廊下を歩き出した。喧噪を嫌い、ウォークマンのイヤホンを耳に挿し込んだ。微かな音量で、『』のメロディが聞こえてきた。静かに、けれど熱く、心臓を叩くような旋律が胸を震わせた。コツ、コツ、コツ——。一定のリズムで、一つの足音が響いている。僕だけの足音だ。それは、なにものにも侵されない心地よい足音——のはずなのに。ふと気になって、片方のイヤホンを外し、その足音に耳を傾けた。未完成の音がする、そう思った。コツ、コツ、コツ——。僕の足音が、一つだけ。それはなぜだか、もう一つの足音を探して彷徨っているようにも聞こえた。(原案:高羽 彩 小説:石原 宙 イラスト:uni)
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